アトピー診療ガイドライン2016年
2016年04月10日
このたびアトピー性皮膚炎の診療ガイドラインが7年ぶりに改訂になりました。
日本皮膚科学会の雑誌にも掲載されました。
検査、治療や生活指導においてそれぞれ推奨度、エビデンスレベルがあります。基本的には、それに基づいて検査・治療・生活指導を行うのが良いことになります。
当院でもそれに基づき、学会認定皮膚科専門医として、生活指導や治療方法を、個々の患者さんの生活環境や病状に応じて指導していきます。
ガイドラインには生活指導も詳しく書かれています。興味があるところなので、一例を記載します。
・アトピー性皮膚炎では角質の水分含有量が低下して皮膚が乾燥し、皮膚バリア機能が低下をきたしている。この状態は非特異的刺激を受けて炎症や痒みを生じる。保湿外用薬(保湿剤)の使用は、皮膚バリア機能を回復させ、皮膚炎の再燃予防と痒み抑制につながる。・・・・エビデンスレベルA(強く勧められる)
・「汗をかくこと(発汗)」と「かいた汗の痕」は区別する。発汗を避ける(運動禁止など)はエビデンスがない。「かいた汗の痕」は痒みを惹起することがある。発汗の多い季節の症状緩和にシャワー浴は有効である。・・・・エビデンスレベルB(勧められる)
・妊娠・授乳婦への食事制限はアトピー性皮膚炎の発症予防に有用ではない・・・エビデンスレベルA(強く勧められる)
★要約すると、「食事制限はしても意味がない」ということです。むしろ胎児・乳児の発育に影響するのでしない方が良いと記載されています。
このように治療だけでなく、生活指導も細かな記載があります。誤解になるといけないので、ホームページ上ではこれだけにしますが、それぞれ生活での対策にも理由があります。当院では診察中に説明しますので、受診ください。
今回の改訂のポイントで重要なのは、プロアクティブ療法のエビデンスが明確になったことです。プロアクティブ療法はエビデンスA(強く勧められる)という記載になりました。当院でも重症のアトピー性皮膚炎の方にすすめている治療法です。まあ、この治療は定期にしっかりと通院し、しっかりと治したいという目標に向かって私の指導に従って治療できる方でないと難しいですが。。
プロアクティブ療法・・・「症状はないがおさまっても定期的に外用して悪化を防ぐ。具体的には症状がおちついたようにみえても完全に中止するのではなく、1日おき・2日おき・1週間おきと徐々に間隔あけをして外用は続ける感じで行います。」(図ではBの治療法です。)。症状がおさまっている時でも皮膚には軽い皮膚炎があって、それを放置していると湿疹が急に悪化するので「先を見越した行動をとる」という理論です。詳しくはこちらをご覧ください。
開院以来、アトピー性皮膚炎の方も多く受診されています。とても安定してプロアクティブ療法で間隔あけの段階にきている方も多く、満足している方のお話しもよく耳にするようになり、私としてはとてもうれしく感じています。
アトピー性皮膚炎で悩んでいる方はどうぞ、ご相談ください。また、プロアクティブ療法に限らず、先にも説明しましたが、生活指導や治療方法を、個々の患者さんの生活環境や病状に応じて治療方法を組み立てているスタンス(オーダーメイド治療)を当院はとっていますので、治療希望だけでなく生活指導で分からないことなどでもご相談ください。
(関連項目)