ステロイド外用剤の副作用について

2017年12月31日

副腎皮質ステロイド外用剤副作用を正しく知るということは、皮膚科にかかっておられる患者さんにとって大変重要なポイントになります。次の【Ⅰ群】と【Ⅱ群】の症状をじっくり眺めてみてください。

【Ⅰ群】高血圧、高脂血症、胃潰瘍、骨粗鬆症、満月様顔貌(ムーンフェイス)、野牛肩、易感染性による肺炎、食欲亢進、糖尿病、白内障、緑内障、骨頭無菌性壊死(大腿骨・上腕骨骨折)、精神障害(うつ)

【Ⅱ群】にきび、潮紅(毛細血管拡張)、酒さ様皮膚炎、皮膚萎縮、多毛、紫斑、細菌・白癬などの真菌・ヘルペスなどのウイルス皮膚感染症の誘発、増悪

【Ⅰ群】の症状は全身的かつ重い症状であり、【Ⅱ群】の症状は皮膚に限定した症状であることに気づかれましたか?【Ⅰ群】はステロイドを長期内服したときに生じうる副作用、【Ⅱ群】はステロイドを長期外用したときに生じうる副作用です。

アトピービジネスと呼ばれる営利目的の商法では、この【Ⅰ群】の“ステロイドを長期内服したときに生じうる副作用”を、外用したときの副作用であるかのように宣伝しステロイドに対する恐怖感を煽っている場合があります。皮膚に塗布するステロイド外用薬の副作用は基本的に皮膚にしかでないというのが原則です。


“原則”は全身的副作用は生じないのですが、1日10gのベリーストロングクラス(※)以上のステロイドを毎日3か月間塗り続けたときは副腎抑制が生じうるという報告があります。しかしこのような大量の外用はめったに行われないものですし、全身的副作用が生じた場合も一過性可逆的なものであり不可逆性の全身的副作用は生じないといわれています。使用したステロイド外用薬の量をきっちりチェックしてくれる主治医のもとで診療を続けることが重要です。

【Ⅱ群】のステロイドを外用したときに生じうる副作用の場合も数か月単位で長期に外用して初めて出現しうるものです。1~2週間以内の短期間の塗布で症状がおさまり、外用薬を中止できる場合は副作用の心配はまず必要ありません。

最後に、患者さんがよく質問される「ステロイドを塗ったあとの色素沈着」ですが、これは誤った副作用の認識です。ステロイドを外用したときに生じうる副作用に「色素沈着」はありません。色素沈着はステロイドを塗布した場合も塗布していない場合も同様に皮膚の炎症沈静後に見られる生理的な現象です。

(※)ベリーストロングクラス:ステロイド外用剤を効果の強さによって5段階に分けたときの上から2番目のクラスを意味します。1日10gという量は、成人でほぼ全身の皮膚に塗布したときの使用量です。

(関連項目)

アトピー性皮膚炎(メインページ)

乳児湿疹・乳児アトピーについて

ステロイド外用剤の塗り方について